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情熱惑星「第285回:ニパ子のアレ職人」

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ニパ子のアレ職人の朝は早い。

起きたらまずは収穫へと向かう。次々ともぎ取られていくアレは光沢感があり瑞々しい。職人は言う。

「やっぱりね、鮮度が命なんです。ニパ子にストレスが掛らないように手早く、だけど丁寧にやらなくちゃいけない」

あっという間に本日分を収穫した。ニパ子はアレが取られたことに気づいた様子もなく、まだスヤスヤと眠っている。収穫したアレの詰まったカゴをカートに載せた職人が次に向かうのは加工場だ。

「ここからは時間との勝負」と、カゴに入っているアレを一つ取り出し加工機に通し形を整えていく。収穫後のまだ柔らかい内に加工しないと、すぐに固くなって加工しづらくなるのだという。流れるような手際でみるみる内に収穫カゴのアレがなくなっていく。

大まかな形を整えた後は、別の加工機でさらに形を整えられる。

ほぼ形が整えられた後は磨きの作業。素人目にはほぼ完成しているように見えるが、この段階では表面がまだざらついているのだという。この状態に磨きを加えることで、より肌なじみの良いものへと追い込んでいくのだ。ここからは経験と勘がものをいう作業。一心に磨きに集中する職人の姿に、張り詰めた空気が辺りを包む。

しばらくして職人が口を開く。
「できました」
そう告げる職人の手には、先ほどまでとは打って変わった重厚な輝きを放つアレがあった。

「出来たてを使ってみてください」と、新幹線の硬いアイスとともに渡される。
持った瞬間にわかる。すっと手に馴染むのだ。そのままアイスに触れると瞬く間に中へと差し込まれていく。

驚く取材陣の様子に、職人の顔にも笑顔が広がった。職人は言う。
「やっぱりね、使ってくれる人が笑顔になってくれるところを見ると職人冥利につきますよ」

翌朝。昨日と同じように、まだ薄暗いニパ子畑に赴く職人の姿がそこにはあった。

ニパ子のアレ職人の朝は早い。

-終-







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